H25 JICA集団研修 (JICA Group Training Course 2013)

「ルーラル地域における課題解決型情報通信インフラの構築・設計」コース
(Building and Designing of ICT Infrastructure for bridging Digital Divide in rural area)

 平成25年7月25日から9月6日までの約6週間、一般財団法人 日本ITU協会(ITUAJ)は、独立行政法人国際協力機構(JICA)からの委託を受けて集団研修を実施した。
 研修内容は、自国のルーラル地域の情報格差是正のためのインフラ開発計画を作成することができる人材を育成することを目的としたものであり、効果的・効率的なルーラル通信網整備および地域情報発信のための理論的、実践的な研修を実施した。

  一般財団法人 日本ITU協会は、JICAからの委託で、平成2年度から平成11年度までは、「ルーラル通信技術コース」(フェーズI) (“Rural telecom engineering course” (phase I))、平成12年度から平成16年度までは、「ルーラル通信計画」(フェーズII)(“Rural telecommunication planning course”(phase II))、平成17年度から平成21年度までは、「村落情報基盤整備手法」(フェーズ III) ”Networking of Rural Community Information Infrastructure course”(phase IV)、平成22年度から平成24年度までは、「地域情報発信能力強化」(フェーズ V)(“Capacity Building for Developing Communication and Information Environment in Rural Community”(phase V))を実施してきた。
 これら5つの研修コースを通して、23年間で、延べ243名(個別研修員を含む)の研修員を受け入れてきた。

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講義 NTTドコモ パナソニック東京センター

 

 本研修は、上記研修を引き継ぐ形で、本年度から実施されるもので、本年度研修は、フェーズVI(3年間)の1年目として実施された。研修員は、バングラディシュ、エチオピア、ミャンマー、ペルー、サモア、ツバル、タイの7カ国から9名が参加した。

 講義科目として、まず、日本の通信事情(Outline of the Telecommunications in Japan)で、日本の通信政策の現状を理解してもらい、ルーラルコミュニティのための情報通信開発戦略(ICT Development Strategy: Global Challenge for Rural Community)、電気通信インフラ開発のための資金調達策(Consideration to Provide Universal Service)、ルーラル通信の役割と開発(Development of Rural Telecommunications)、ルーラル通信概論(Fundamentals of Rural Telecommunication Network)というルーラル特有の科目で、ルーラル地域のICT開発理論の概要を習得してもらった。さらに、光ケーブ方式(Fundamentals of Optical Networks)やW-CDMA および LTE(Outline of Cellular Network (W-CDMA, LTE))、地デジシステムを利用した情報配信システム(Terrestrial Digital Broadcasting for Distributing Information in Rural Area)、センサーネットワーク(Sensor Network)等のネットワーク設計に必要な主要技術科目を網羅した。また、ルーラル通信網整備の実例として、村落地域での情報化に必要なICT技術と仕組みつくり(Actively Promote Use of ICT Utilization in Rural Area)の科目を用意した。それらの中で、東日本大震災直後からのモバイル通信サービスの復旧状況についての講義も実施した。

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 ネットワークプランニング演習  講 義 プレゼンテーション

 

 設計したネットワークの分析科目としてフィージビリティースタディーに必要な調査項目の説明(Study items and process of Feasibility Study)およびPCM手法(Outline of Project Cycle Management Technique)の講義を実施した。

 演習科目として、ネットワーク・プランニング演習(Drill in Network Planning)を実施した。この科目は、これまでに本研修で習得した技術知識を基に、6つのルーラルモデルエリアについて事例研究を行うもので、研修員は、6つの各エリアに最も適したルーラル通信網を設計・立案し、毎日、その結果を発表、各科目の講師を交えて検討、討議を行った。この演習は、本コースで習得した技術の集大成であり、帰国後もこのシステム設計演習で学んだ技術、知識が自国での計画、立案に適用できるため、研修員に好評であった。

 ルーラル地域にネットワークを実際に構築し、運用している実例として、鳥取県智頭町を視察した。同町では、IRU(Indefeasible Right of User)という制度を導入してルーラル地域の情報化を実現している。IRU制度というのは、自治体がネットワークを構築し、通信事業者が、そのネットワークの運営を行うという、いわゆる公設民営の方式である。

 また、ルーラル地域で、活用できる電源として注目を集めているソーラシステムの視察として、パナソニック㈱ エコソリューションズ社 二色の浜工場を訪れた。さらに、情報通信の最新技術の視察として、NTT関西R&Dオープンルームの視察を行った。各視察とも、講義の内容を実際に体験できたばかりか、通信の新技術に触れることができたと研修員から好評を得た。

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鳥取県智頭町視察

 研修の最終段階で、研修員は、自国の実際のルーラル地域を対象にした情報格差是正を目的としたインフラ開発計画案を作成し、インテリム・レポート(Interim Report)としてJICAに提出するとともに、プレゼンテーションを行った。インテリム・レポートは、ネットワーク・プランニングのみならず、プロジェクトマネージング手法(PDM: Program Development Matrix)を駆使し、設計したネットワークに財務(採算性を含む)、人材、調達、環境、維持管理、将来計画などを適用して、最終的にインテリム・レポートとして、まとめあげるもので、最終日の各研修員のプレゼンテーションの際には、活発な質疑応答が行われた。本インテリム・レポートは、研修員が帰国後、所属組織内で共有し、内容のブラッシュアップを行い、研修修了2ヶ月以内にファイナルレポートとして、JICAに提出される。

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エコソリューションズ社 NTT西日本 研究所 送別昼食会

 なお、本研修コース期間中、研修員へはパソコンを貸与し、原則、テキストはCD-ROM版のみとすることで電子化を図っている。

 本研修コースは、研修員から、満足のいく評価が得られているが、一般財団法人 日本ITU協会は、研修終了時に研修員より講義内容、テキスト、施設見学および研修旅行に対する評価、意見ならびに要望等を聴取し、これらの評価結果を分析、検討し、コース実施上の問題点を明らかにし、次年度以降の研修の内容に反映させる考えである。

以 上