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2024. 6.28
日本ITU協会 専務理事 田中和彦
2023年10月8日(日)~10月12日(木)、京都国際会議場で開催された IGF Kyoto 2023の Day 0 10月8日(日)~Day 2 10月10日(火) [ schedule ] の模様を、写真を中心にご覧に入れます。(クリックすると拡大イメージが表示されます)
日本で初めて開催されたInternet Governance Forum (IGF)ですが、登録者10,000万名以上、会場参加者6,000名以上、オンライン参加者約3000名、また、350を越えるセッションが同時進行し、大変な盛会振りを示しました。
本会合の位置づけ、内容に関しては、当協会「ITUジャーナル 2024年4月号」に、総務省 飯田氏「IGF京都2023を終えて」、JPNIC 山崎氏「日本で初開催 IGF京都2023に参加して」にて寄稿頂いています。
また、成果文書として"IGF 2023 Summary"、”IGF 2023 Annual Meeting Summary Report"が公開されています。
実質、会合初日であるDay 0より、各国高官、リー国連経済社会問題担当事務次長などが参加したハイレベルセッションが開始されました。日本からは河野デジタル大臣が登壇されました。
本セッションでは、ノーベル平和賞受賞者マリア・レッサ氏、日本からは、慶応大学の山本龍彦教授が登壇されました。
いかに災害に強いネットワークを構築するか、災害から迅速に復旧するかというテーマで、NTT、KDDIなどが発表を行いました。
ラテンアメリカ圏における性的デジタル暴力訴訟に関するセッションで、参加者は非常に少なかったのですが、参加者は非常に熱心で、質疑も活発に行われていたのが印象的でした。
Trusted Personal Data Management Service(TPDMS) 情報銀行に関するセッションで、情報銀行推進委員会別所委員長代行、崎村情報銀行認定分科会長が講演されました。日本政府のDFFTへの取組も紹介されました。
いかにオープンで安全な5Gを構築するかに関するセッションで、総務省 田原国際戦略局長、菱田 北陸総合通信局長(元 国際戦略局参事官)が講演されました。
若手にフォーカスしたセッションで、若手登壇者とリー国連経済社会問題担当事務次長、「インターネットの父」ヴィントン・サーフ氏らが議論していることが興味深く感じられました。
このハイレベルセッションには、やはり「インターネットの父」である慶応大学村井教授、ドリーン・ボグダンマーティンITU事務総局長が登壇されました。
世界情報社会サミット(WSIS)に関するセッションで、本サミットの設立に関わった元ITU事務総局長内海氏がビデオメッセージにて登壇しました。ITUからはドリーン・ボグダンマーティン事務総局長、日本からは吉田総務審議官が登壇されました。
このセッションも、専門的、特定的なテーマで、参加者は非常に少なかったのですが、参加者もこのテーマのために参加しており熱心に聴講し、活発な質疑が行われていました。
JPNIC前村氏、NEC兼保氏による「メタバースの住人」に関するセッションで、バーチャル美少女ねむ氏、マルタ大学リュドミラ・ブレディキナ氏が講演されました。ねむ氏は、バーチャル空間で生活し、アバターによる活動を実践するだけでなく、この分野の動向を、ブレディキナ氏とともに研究しています。
ねむ氏は、特殊なセンサーを装着することにより、口の動きや、表情、立ち上がり、歩行などもバーチャル空間で再現しており、そのリアリティの高さ、自然さに驚かされました。
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「メタバースの住人」は増加傾向であり、リアル空間とは別の世界が構築されつつあるという印象を持ちました。
(実質)初日の夜に、会場全体を使った盛大な歓迎レセプションが行われました。広大な会場ですが、多くの参加により混雑しており大いに盛り上がっていました。和太鼓のパフォーマンス、また、あいにくの天候でしたが、花火がイベントに華を添えました。
正式な初日となる、Day 1に、開会式が行われ、オープニング映像投影の後、リー国連経済社会問題担当事務次長挨拶、グテーレス国連事務総長ビデオメッセージ、そして、日本からは岸田総理大臣が本会合の意義などを講演、挨拶し、本会合が開会しました。
このセッションでは、岸田首相が基調講演を行い、ノーベル平和賞受賞者マリア・レッサ氏などによる意見交換が行われました。
鈴木総務大臣[当時]は、日本のAI原則への取り組みを紹介しました。慶応大学村井教授、ヴィントン・サーフ氏、ドリーン・ボグダンマーティンITU事務総局長などにより議論が行われました。
鈴木総務大臣[当時]や各国高官、関連団体などのステークホルダーから意見表明が行われました。
JICAが提唱している途上国開発のためのDFFTについてのセッションで、JICA 専門家 山中氏、最高デジタル責任者(CDO) 戸島氏、また、リモートで宮田氏が登壇しました。
本セッションは、国際商業会議所 (International Chamber of Commerce ICC)によるセッションでDFFTを実際どう運用するかについての議論が行われました。
夜には有志によるバンド演奏、DJプレイにより、参加者が踊り出すなど、大いに盛り上がりました。
「全てがつながっている」インターネットで、接続が途切れ、インターネットが分断されるという懸念(Internet Fragmentation)についての議論が行われました。
ICT技術を活用し、いかに気候変動対策を行うかという議論が行われました。
国連事務総長により提唱された、「すべての学校を含むすべての人々をインターネットに接続する」などを目標とする、Global Digital Compact (GDC)に関する意見表明、議論が行われました。
サイバー犯罪への対応に関して、国家間の取り決めと現実に起きている事象とのギャップに関する議論が行われました。
2025年に国連総会で行われる予定のWSIS+20に向けた、国連のCommission on Science and Technology for Development (CSTD)による取組などが紹介されました。日本からは総務省の上野氏が講演されました。
国内外の通信事業者、ソリューション・機器ベンダー、プラットフォーマー、各種団体により、76のブースで展示、デモンストレーションが行われました。最新の技術、例えば、700km区間でのAll Photonic Networkを使ったリアルタイム制御デモンストレーション(NTT)、HAPS実機展示(ソフトバンク)、メタバースデモンストレーション(KDDI)などが参加者の目を引く一方で、ブースには誰も居らず「ご芳名をお書き下さい」というメモが机の上に置いてあるダケというブースもあって、本イベントの多様性を展示ブースでも実感しました。 [ 展示マップ ]
展示ブースマップ、展示社一覧 | Meta | The Wikimedia Foundation | GitHub | Caribbean Telecommunications Union | Preferred Networks Inc. |
NTT | 700km APN デモンストレーション | ソフトバンク | HAPS無線装置 | KDDI (au) | メタバースデモンストレーション |
BBIX | GMO | ATR & ATR-Trek Co., Ltd. | 欧州評議会 | インドネシア |
JPRS | Internet Society | WIDE Project | JPNIC (前村氏、山崎氏) | The LEGO Group & UNICEF | DotAsia Organisation |
Internet 3 | Trade Waltz | NICT | サイバーセキュリティ展示 | IIJ | IIJ (佐々木氏) |
万国郵便連合 (UPU) | Regional Internet Registries | NHK | NHK WORLD-JAPAN展示 | Kyoro | EXPO 2025 Osaka |
会場では、「和のおもてなし」として、茶の湯や着物の体験コーナーがあり、多くの参加者が楽しそうに体験していました。
会場に向かう地下鉄、最寄り駅にはつり革広告、ポスターが展示されイベントのプレゼンスを高めていました。会場では、京都らしい風景、写真スポットも用意されていました。会場はこのような歓迎ムードに包まれていましたが、国連のイベントであり、セキュリティは厳重で、入口では空港のようなセキュリティゲートが設けられており、また、国連から派遣された警備員も配置されていました。
幸いにもドリーン・ボグダンマーティン事務総局長への表敬訪問が実現し、2025 大阪万博におけるITU展示などに関して、意見交換を行うことが出来ました。
今回、初めてIGFに参加しましたが、一番印象に残ったのは、参加者の幅の広さです。国連、各国政府から、通信事業者、ソリューション・機器ベンダー、また、団体、研究者など、言わば、国際レベルの会合ですが、同好者による手作りイベントのような側面も持ち合わせており、世界~各国~個人が入り交じった会合と言う印象でした。
この状況が、会合中、良くきかれた「マルチステークホルダー」という言葉、そのものかな、とも感じました。
「誰かが、あるいはある場で、一元的に決める」のではなく、「関わる人々全てが参加して議論」ということだと思いました。
それは、自由であり、大いなる発展性を感じさせるものですが、一方、インターネットが性善説を前提にできなくなり、性悪説的な現実を生じていることを思うと、このようなある意味、混沌とした状態が続いて行くとどうなるのだろうかと一抹の不安も感じました。
インターネットガバナンスの動向に今後も注目して行きたいと思います。
参考情報:使用機材 Pnasonic DC-FZ1000M2、SONY DSC-RX100M5A
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