2015.10.22 更新
日本ITU協会 専務理事 田中和彦
10月12日(月) [現地時間]から15日(木)までの4日間、ハンガリーのブダペストでITU テレコムワールドが開催されました。
現地からの速報としてフォーラム模様を中心にお伝えしましたが、展示会模様などをお伝えします。(写真はクリックで拡大表示されます、詳細をご覧下さい)
ジャパンセッション、閣僚級ラウンドテーブル 2015.10.14
追記
産業界とSMEとの対話、ヤングイノベーター 2015.10.15
追記
SMEプレゼンテーション、クロージングセレモニー 2015.10.16
追記
日本パビリオン、各国パビリオン、各社展示、SME展示、スマートシティ展示,、まとめと感想を追記し、全天球写真他を追加しました。
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オープニングセレモニー会場 |
オープニングセレモニーでは、ジャオITU事務総局長の開会挨拶、バン国連事務総長のビデオメッセージ、大手スポンサーであるドイツテレコム副社長の挨拶に続き、ハンガリー出身の著名人であるフォン・ノイマン氏の令嬢からのメッセージ、また、非常に未来的なパフォーマンスに続き、ハンガリー国首相が歓迎挨拶を行いました。
同国は、ヨーロッパの中ではICT先進国であり、ブロードバンドの整備と、教育への活用を主とした「デジタル・ハンガリー」への取り組みが紹介されました。
司会者 | ジャオ事務総局長開会挨拶 | ハンガリー国首相歓迎挨拶 | パン国連事務総長ビデオメッセージ |
ドイツテレコム副社長 | フォン・ノイマン氏の令嬢 | 未来的なパフォーマンス | 記念撮影後の握手 |
オープニングセレモニーの後、ITU幹部、ハンガリー国首相によるパビリオンの視察が行われました。
阪本総務審議官による説明 | ジャオ事務総局長も同行 | NICT富田理事による説明 | 日本電池再生小澤顧問と握手 |
日本パビリオンでは、総務省の阪本泰男総務審議官がご案内し、非常に時間が限られていたので一部の展示に限られましたが、大変に熱心に視察して頂きました。
下記の日程で開催される予定です。
第1日目 | 第2日目 | 第3日目 | 第4日目 |
初日、午後にジャパンセッション Society Construction with a Sense of Security -Making full use of "IoT" for Future - が開催されました。
会場模様 (次第 pdf) | 阪本総務審議官 | NICT 富田理事 (資料 pdf) |
総務省阪本泰男総務審議官による挨拶と各社紹介の後、NICT、NTT、富士通、IIJ、日本電池再生、各社よりプレゼンテーションを行いました。
最後に登壇した日本電池再生小澤顧問の「私は88歳です。今日のプレゼンは最後になるかもしれませんが、一番いい内容だと思います!」に会場は暖かな微笑みに包まれました。
NTT 川村所長 (資料 pdf) | 富士通 金光環境本部統括部長 (資料 pdf) | IIJ 丸山執行役員 (資料 pdf) | 日本電池再生小澤顧問 (資料 pdf) |
質疑応答では「このような社会を実現するためには、規制当局としてはどのように考えるか?」という単刀直入な質問に対して、阪本総務審議官は「個人的な見解ですが」との前置きの後「この会議で重視されているSMEの活躍がカギになると考えています。そのためには技術と規制のバランスに配慮すること、マルチステークホルダーによる取り組みが大事だと考えています。」と熱く語りました。
また日本電池再生小澤顧問に対しては「スマートフォンなど電池が非常に重要です。どうしたら貴方のように電池を長持ち(長生き)させることができるのでしょうか?」という質問に、それによって(人間も)活性化出来るとの意を込めて「しっかり充電することが大事です。」と答え、会場では納得の表情も見られました。
国の政策や各社の製品・サービスを紹介するだけではなく、参加者との双方向のコミュニケーションを図ることが出来たと感じました。
第二日目、午後に、各国の大臣級閣僚によるラウンドテーブルが開催されました。
会場は報道陣で一杯です | 各国代表と阪本総務審議官 | ハンガリー経済大臣 | ジャオ事務総局長 |
この会議では2014年に韓国・釜山で開催された全権委員会議で採択された Connect 2020の実現に向けた Budapest Call for Action に関する各国からの支持表明、意見提示などの議論が行われました。
日本からは阪本総務審議官が「重要なポイントは2点、SMEが情報にアクセスできるプラットフォームを作ること、そして、過度な規制を行わないこと」とのメッセージを表明されました。
各国からの熱心な意見提示などによって議事は当初の予定を大幅に超えました。それだけ各国の Connect 2020に向けた関心の高さを感じました。
第二日目の政府とSMEとの対話に続き、第三日目には産業界とSMEとの対話が行われました。
会場模様 | ジャオ事務総局長 | 司会者 | IIJ 丸山執行役員 |
冒頭に挨拶したジャオ事務総局長は「SMEの参加が少なくてがっかりしています。(ITUの)テレコム担当にはSMEにより多く参加してもらうようにずっと言い続けてきたのですが。」と発言し、やや緊張した笑いが起きたのですが、実際には、パネルにも参加者にも相当数のSMEが参加しており、同氏の思いのアピールであったのかも知れません。
日本からはIIJの丸山執役員が出席し「IIJもかつては先進的なインターネットプロバイダー、SMEだった。」「現在はSMEに役立つクラウドやコンテナ型データセンターなども提供している。」と発言しました。
米国国際金融会社 | ハンガリー金融系ソリューションSME | 英国インテル副社長 | 質疑応答模様 |
SME、大企業に加え、SMEに投資を行う会社・機関も参加し「SMEに必要なのは(お金より)アイディアと熱心さだ」「やはりまず大事なのは融資だ」「コンサルティング、教育・訓練、出資が欲しい」「大企業はなぜ我々の製品を採用してくれないのだ」など様々な意見が交わされました。
ITUでは、Young Innovator Programという活動を通じて各国の若者による起業、社会活動を支援し、優秀・優良な案件を表彰しています。
今回も、昨年の受賞案件、今年の受賞案件に関するプレゼンテーションが行われました。
仮想現実技術により遺跡等の昔の姿を体験 | 災害発生後のマネジメントシステム | 健康管理プログラム | インテリジェントゴミ箱システム |
昨年の受賞によって取組の認知度が高まる等、促進されたとの発言が多かったのですが、実現化に取り組んでいる案件も多いという印象でした。
SME検索サービス | デジタルストーリーテリング | 太陽光発電システム | タンジブルスマートフォン |
今年の受賞案件として、SMEと出資者を結びつけるための検索サービス、子供たちにデジタル技術を教えて物語を語らせるデジタルストーリーテリングなど、人と人を結びつけようとするもの、また、電力不足対策として月50ドルでの提供を目指す太陽光発電システム、視覚障碍者のための触って使える、感じられるタンジブルスマートフォンなど、新しいアイディアによって困っている人々を助けようという取り組み等が紹介されました。
各案件の実現性、市場性などを考えるとなかなか大変そうですが、生き生きとした考案者の表情を見て、今後に大いに期待したいと思いました。
第三日目には、今回の会合には多数、出展しているSMEによるテンポの速いプレゼンテーションが行われました。
光ファイバ、関連製品ベンダ | センサーとスマートホンで姿勢を矯正 | 牽引サービス | 鉛蓄電池再生技術 |
日本からは日本電池再生冨永顧問が同社の鉛蓄電池を再生させる添加物や再生技術についてプレゼンテーションを行いました。
内容のユニークさ、例えば、肩の後部にセンサーを装着してスマートホンとの連携によって姿勢を矯正し、いわゆる猫背を防止するアイディア、や、スマートホンを活用した迅速な牽引サービスは、その国での自動車の故障率が高いという事情などが興味深いことに加え、「出資者を募っています」「この地域での販売パートナーを求めています」などメッセージの明確さが印象的でした。
最終日に開催されたクロージングセレモニーは、会期中、各セッションなどに分散していた参加者が一堂に会し立ち見も出るほどの盛況でした。
会場模様 | ジャオ事務総局長閉会挨拶 | パネリストによる総括 | 3Dショー |
ジャオ事務総局長は、参加者 4,000名、参加国 129ヶ国、参加閣僚 47名などの数字も交えて閉会の挨拶を行いました。
ジャオ事務総局長と日本電池再生冨永顧問 | 各国優良SME | ヤングイノベーター | 優良SME |
ホスト国ハンガリーの閣僚挨拶に加え、ITU 150周年をイメージした3Dショーも披露されセレモニーに華やかさを添えました。
また、各国優良SME、ヤングイノベーター、優良SMEの表彰も行われ、日本からは、日本電池再生が受賞されました。おめでとうございます。
今回、日本パビリオンでは、総務省主催により、富士通、NICT、日本電池再生、IIJの各社・機構が展示を行いました。
サプライズだったのは、サヌーITU-D局長がわざわざ訪問されたことで、通常、ITU幹部のパビリオン見学は事前に予定されるのですが、今回はご本人の意向で訪問されたようです。
通常の展示会では、会期中、徐々に見学者が減っていくことが多いのですが、今回は、最終日に、セッションの無い時間帯があったことと、ホスト国ハンガリーの意向で、大学生の見学者を受け入れたため、最終日が一番賑わった印象があります。またハンガリーの地元放送局の取材も受けました。
大学生の皆さんは熱心に説明に耳を傾けていましたが、幼児を連れたお母さん大学生も見学に訪れ少々、驚きました。
パビリオンでは中心から見渡せるように内向きに展示を行いましたが、展示台の背面等には各社のロゴと季節を感じさせる紅葉をあしらい好評を頂きました。
各国パビリオンで最大の面積はホスト国ハンガリーでしたが、中国パビリオンが、中国国内の各通信会社の展示によりかなり目立っていました。
各国パビリオンでは、その国自体やハイテクパークなどの開発計画の紹介が多いのですが、今回は、SMEをテーマに掲げたこともあり、各国のパビリオンの中で、その国のSMEが展示を行っているのが特徴的でした。
各社展示は各国と比べると少ないのですが、その中でも中国のZTEとHuaweiが目立っていました。
HuaweiではAndroid Wareを実装した腕時計を展示していました。文字盤はかなりリアルでスライドさせた時には新鮮な印象を持ちました。
動画 ( wmv | mov | mp4 ) |
その他には、韓国のKT、ハンガリーのマジャール・テレコム(ドイツ・テレコム)、また、インテル、ドイツのRONDE&SCHWARZが展示を行っていました。
今回の一つのテーマであるSMEについては専用のコーナーが開設され、ハンガリーの通信系SMEによる展示が行われていました。例としては、ソフトウェアによる汎用基地局技術、VoLTE技術、電磁強度モニタシステムなど、携帯系・無線系の技術・製品展示が多い印象を持ちました。
ハンガリー政府によりスマートシティをテーマにしたコーナーが設けられ、センサ(カメラ)付き屋外デジタルサイネージ、自動運転自動車技術、ノンメタル軽量電気自動など、都市のインテリジェント化、エコロジーの推進などの同国の技術が展示されていました。
以下、個人的なまとめと感想です。
(1) 全体的なトレンドとしてのキーワードは、5G、IoT、ビックデータ、信頼・安心、ローカルコンテンツ
(2) ITUとしては、Connect 2020に向けた努力とそれによるICT社会の実現、また、SMEによる産業の活性化
(3) 日本は Connect 2020を実現しており、その上での応用、社会問題の解決など、いわばBeyond 2020を世界に示しうるのではないか
全体的な動向としては、やはり5Gが大きなキーワードで、昨年に比べると具体的な議論が多かったと思います。特に広帯域だけでなく、低遅延、また、膨大な数の同時接続・通信が注目され始めたという印象です。また併せて正に物がインターネット化する(IoT)ので莫大なデーター(ビッグデータ)が発生し、その活用によって新しいソリューションやビジネスが生まれるのではないかという期待も高まっています。一方、あらゆる物がどこかにつながっている社会では今まで以上に信頼や安心が大事だという意見も多く聞かれました。更にはサービスや製品のコモディティ化対策やOTT対策として付加価値を高めるローカルコンテンツの重要性も強調されていました。
ITUとしては、インターネットの普及を図るConnect 2020の実現とそれによるICT社会の実現、社会的問題の解決、また、これまでの各国政府、また、各国の大企業に加え、SMEによる活性化に注力していると感じました。
このような状況において、日本では、既に、加入者系光ファイバ網(FTTH)、高速モバイル網(LTE)、ハイビジョン地上デジタル放送が導入されており、私たちは日々それらの中で生活しています。よって日本は世界に向けて、ICTの応用やそれによる社会問題の解決など、Connect 2020実現後の社会の姿 Beyond 2020を示しうるのではないかとの思いに至りました。
今後も世界全体とITUの動向を把握し、日本からの情報発信に寄与すべく努力して行きたいと思います。
補足:「SME(Small and Medium Enterprises)」は直訳すれば「中小企業」ですが、本レポートでは「スタートアップ企業」「ベンチャー企業」とご理解下さい。
参考情報:使用機材 PANASONIC DMC-FZ1000 (16:9写真 4Kビデオより切出)、SONY DSC-RX100 M2 (パノラマ写真、3:2写真)
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