H24 JICA集団研修 (JICA Group Training Course 2012)

「通信インフラストラクチャーの構築のための標準化」コース
(Standardization Needed for the Deployment of Telecommunications Infrastructure)

 平成25年1月10日から2月8日までの約4週間、(一財)日本ITU協会は、(独)国際協力機構(JICA)からの委託を受けて集団研修を実施した。研修内容は、参加国における国際標準を活用したICTインフラ整備等の社会問題解決に向けた最適なICT政策を検討できるような人材を育成することを目的としたものであり、国際標準を基点として、より効果的・効率的な通信インフラの整備について理論的、実践的な研修を実施した。

 本研修は、平成22(2010)年度から3年を1フェーズとして総務省が実施していたもので、3年目にあたる平成24年度研修について総務省の協力を得て、当協会が実施したものである。

 研修員は、ブラジル(2)、イラク(2)、パラオ(1)、ベトナム(1)の4カ国から6名が参加した。

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総務省にて JICA東京セミナールームにて

 研修は、各研修員の自国の通信事情、標準化の体制等を発表するインセプションレポート発表から始まった。

 講義は、国際標準化機関であるITUにおける標準化活動について最新動向を解説する「ITU-T SG15における通信網インフラの標準化動向」(Standardization trends on Telecommunication Network Infrastructure in ITU-T SG-15)を皮切りに、日本の通信政策・標準化政策科目として「ICT分野の標準化について」(Standardization in the ICT Sector)、「日本の情報通信分野における技術政策の現状と展望」(Current state and future issues for technology policy in Japan’s telecommunications sector)、「日本の電気通信事業政策」(Outline of Telecommunication Policy)、「日本の周波数政策」(Spectrum management policy in Japan)、「日本における電気通信機器の基準認証制度」(Conformity Certification System for Radio Equipment in Japan)、「東日本大震災と通信インフラの復興」(The Great East Japan Earthquake and Restoration of ICT Infrastructure)、「総務省における海外連携」(International Cooperation in the ICT Field)の講義を行った。

 また、政策講義の最後に、「ルーラル・コミュニティーのための情報通信開発戦略」(ICT Development Strategy)の講義を行い、途上国における通信インフラの導入、構築、問題点等について具体的に説明を行った。

 国際標準化機関の最新動向、日本の通信政策・標準化政策および制度に関する講義が終了したところで、PCM (Project Cycle Management)という分析手法の講義を実施し、研修員の各国における標準化に関する課題の抽出を行うとともに、ディスカッションにより、研修員間での知識レベルの共有を図った。

 通信政策・標準化政策の講義の後、日本の標準化推進組織の活動について講義を行った。「TTCにおける情報通信に関する標準化活動」(Towards Global Standardization in TTC)、「電波システムの標準化」(Standardization of Radio Systems)において、TTCおよびARIBの活動概要について説明し、「電気通信端末認証制度の概要」(Certification System for Telecommunications Equipment in Japan)、「HATSの活動(概論、NGN 端末、光アクセス、HDTV会議端末)」(Over view of HATS)においてTELEC、HATSの役割、活動について説明を行った。さらに、ユニバーサル・サービス実現のための資金調達に関する講義として、「ユニバーサル・サービス」(Consideration to see Universal Service Obligation Fund)を実施し、世界各国の実例および日本の状況について、事例を交えながら説明を行った。

 政策制度関連の講義が終了したところで、2回目のPCMの講義を実施した。各研修員が各国の標準化を取り巻く環境、阻害要因等について分析を行い、ディスカッションにより、各研修員間の知識レベルの共有化を図った。

 本研修の後半は、日本の通信関連企業の標準化活動、新技術とその標準化への取り組み等に係る講義を行った。

 伝送分野の標準化活動として「光ファイバケーブルについて」(Optical Fiber Cable)、「光アクセス網の標準化活動」(Standard activity for optical access network)の講義を行った。

 また、KDDIの標準化活動について「KDDIのICTサービスおよび技術の開発戦略」(KDDI’s Strategy for Development of ICT Service & Technology)の講義を行った。放送分野の標準化の取り組みとして、「ケーブルテレビの標準化」(Standardization for cable Television)、「放送インフラの構築について」(Setup of Digital Terrestrial Television Broadcasting Network)、「放送と通信の役割・連携について」(New Services Based on the Integration of broadcasting and Communications)、「ハイブリッドキャストについて」(Hybrid cast-Integration of Broadcasting and the Internet)、「IPTVの標準化動向とサービス」(IPTV Service and Standardization)の各講義を行った。

 また、新技術の標準化活動として、「デジタル・サイネージ概要」(Introduction of NEC’s Digital Signage Solution)、「ワイヤレス・ブロードバンドアクセス」(Toward Wireless Broadband – Objective and Challenges -)、「NGNの標準化概要」(Next Generation Network(NGN) Standardization Activities in ITU-T)、「スマートシティー」(Smart City)、「電子政府とGISソリューション」(E-Government and GIS Solution)、「ホワイトスペース通信技術と標準化の概要」(White Space Communication Technology and Standardization)、「ボディーエリアネットワークおよびUWBの応用について」(Body Area Network and Application of UWB)、「移動通信技術の進化について」(Evolution of mobile communication Technologies)、「インフラ技術におる安全安心社会の創設」(“Creat Safety and Secured Society by Infrastructure Technologies”)、「ミリ波レーダー技術」(Millimeter wave rader technology and standardization)の各講義を実施した。

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三菱電機尼崎工場視察 パナソニックセンター東京視察

 施設見学としては、三菱電機の尼崎工場を訪問し、情報通信機器の開発、生産について視察を行った。また、京都大学にて、「電力通信と標準化」(Selected Topics of Radio Communications, Power Line Communications and Standard Time)、「ワイヤレスLANの標準化とフォーラム標準化」(“Forum Standards” and Standardization on Wireless LAN)の講義を実施し、好評を得た。

 さらに、NHK、NEC、NTT「NOTE」、パナソニックセンター東京、NICT(小平)、NICTワイヤレスネットワーク研究所(横須賀)、NTT docomo(横須賀)をそれぞれ、訪問し、各社・団体における新技術の開発、標準化活動等について視察を行い、各社の最新技術、標準化への取り組みなどについて理解を深めた。

 本研修の全体スケジュールの最終段階で、3回目のPCMの講義を行い、各研修員に各国における標準化に係る課題、環境、阻害要因等の分析から課題の解決策(案)を提案するところまで指導し、ディスカッションにより各研修員間で考え方、提案内容の共有化を行った。

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京都大学

 

 研修の最終段階で、アクション・プランを作成し、中間報告を行った。アクション・プランは、自国の通信インフラに係る標準化活動に関する課題とその解決策を提案するものであると共に本研修で学んだことを自国でどのように活用していきたいかについてまとめ上げるもので、最終報告書(Final Report)は、研修員が帰国後、上司と相談の上、個人ではなく、組織として提出されることとなっている。提出された報告書は、JICA内で検討され、実現の可能性の高いものがあった場合には、JICA現地事務所等を通して、フォローアップ等、さらに、実現に向けた活動が行われる。

 本研修コースは、研修員からは、概ね良い評価を得ているが、(一財)日本ITU協会は、より満足の得られる研修としていくために、研修終了時に研修員より講義内容、テキスト、施設見学および研修旅行に対する評価、意見ならびに要望等を聴取し、これらの評価結果を分析、検討し、コース実施上の問題点を明らかにし、次年度以降の新規研修の内容に反映させる考えである。

以 上