2016年世界情報社会・電気通信日の特別記念局8J1ITU運用報告
2016年の8J1ITUの交信数とその概要
一般財団法人日本ITU協会が後援する日本ITU友の会アマチュア無線クラブは2016年5月1日から31日まで「世界情報社会・電気通信日」の特別記念局アマチュア無線局コールサイン8J1ITUを運用しました。昨年はITU創立150周年の年でしたので12、456局の交信に成功しましたが、 今年のHFバンドの伝搬のコンデションは昨年よりさらに低下し、特に北米のHFの伝搬が悪く、SSBによる交信はかなり厳しく、CWで何とか交信できる程度でした。ヨーロッパ方面も北米方面に比較すると少しましな程度で、伝搬が開けても持続時間が短く、そのタイミングも、霞ヶ浦の1Kw局でオペレータもそろい24時間運用できる週末の土曜夜に限ってコンデションが悪いという日が多く、昨年は海外局と5121局と交信できたのに比べて4575局と減少しています。 こうした伝搬の悪さは国内でも同じで、昼間の7MHz帯では例年はコンデションの低下に悩む事などあまり無いのですが、普段は込み合って運用できる空き周波数のほとんど無いバンドが、空き周波数だらけで、いくらCQを出してもなかなか呼んでもらえないといった場面もありました。 こうした悪条件の中でしたが、クラブ員の努力のおかげで今年は昨年を上回る12,922局の交信を達成しました。 もう少しで13,000局という所でした。 昨年の交信実績を超える事ができたのは、関東各地で行った移動局の活躍でした。 昨年の霞ヶ浦の1KW局の交信は全体の74%あったのですが、今年は71%に減少しています。 これが昨年とのコンデションの違いを反映するとしたら、今年の実績は移動局の運用に助けられた結果と言えます。 今年の移動する局の運用では、クラブ始まって以来初の小笠原(JD1)での移動運用を行いました。これはクラブ員の斎藤氏が個人で小笠原に渡航して運用するタイミングが8J1ITUの運用期間と重なったので、その貴重な一日を個人のコールサインではなく8J1IYUで運用していただきました。 又航海中の船内から海上移動で運用し129局、小笠原村移動では505局の交信を達成しました。
運用の準備
運用に入る前の準備期間では、4月16日にクラブ員による霞ヶ浦のアンテナ周辺の草刈りを行いました。 今年は春の気温が低かったせいもあって、雑草の伸びも遅かったので例年より早く作業を終える事ができました。 運用する無線室や宿泊施設の清掃も合わせて行いました。 恒例の裏の竹林での筍堀も大収穫でした。 参加したクラブ員の方にこの場を借りてお礼申しあげます。
無線機設備の整備
昨年から使用している1.8MHzのダイポールアンテナのエレメントが切断したために、4月16日の草刈りの日にクラブ員の協力を得て、エレメントの交換作業を行いました。 今年はDX局2局を含む65局をこのアンテナで交信しています。
また複数の局が同時に運用する霞ヶ浦の局では、それぞれの送信する信号のスプリアスなどで高調波関係にある別のバンドでは受信を妨げるのが普通ですが、これを軽減するためにそれぞれの受信機の入力回路にバンド別にスイッチでON/OFFできるRFのノッチフィルタを設置しました。 この改造のおかげで複数の局の同時運用がかなり楽になりました。
今年の運用
今年の運用開始日の5月1日は日曜日だったので、前日の4月30日の夜から徹夜で運用しようとベテランのオペレータ7人が待機し、AM00:00の運用開始を待ちました。 期待とは裏腹にDXの伝搬は開けず、DXはCWが中心の運用となり、朝が来て国内の中心の交信に移り、初日とあって国内の局からは沢山呼ばれましたがこれも7MHzが中心で他のバンドはあまり交信数が伸びず、使えるバンドに対してオペレータが余る状態でした。 それでもCWのオペレータがそろったおかげで初日の交信数は1527局でした。連休の間にどれだけ交信数を伸ばせるかで、全体の交信数が決まってしまうとも言えるのですが、今年の連休はDXのコンデションが悪くパイルアップになる事は少なく、CQ連呼で運用いつもとは様子の違う運用が始まりました。
霞ヶ浦の1KW局の運用
バンドのコンデションが悪い場合はCWの運用比率が高くなります。 今年は昨年よりさらに悪いコンデションだったために普通ならCWの交信比率が高くなるのですが、DXのコンデションの悪化を国内の交信で補った結果今年のCWの運用比率は昨年58%だったものが今年は52%と逆に減少しています。 参加者では最年少のオペレータは、3級の免許取り立てでオンエアした小学校6年生の海老名君から中学生、大学生、社会人、YL、OMと多彩な方々が運用に参加しました。 今年の運用では海老名パパがジュネーブのITU特別局4U1ITUとSSBで交信に成功しています。霞ヶ浦の局の交信数は9,180局で昨年と比較して10局少ないだけでした。
移動運用
移動する局は、我孫子、石岡市、土浦市、さいたま市、さいたま市、阿見町、吉川市、山形市、熱海市、墨田区、江東区、小笠原村、海上移動と多彩な運用を行い3,742局と交信し昨年度に実績を476局上回る結果を出しています。 今年は小笠村の移動が貢献しました。
「世界情報社会・電気通信日のつどい」式典の参加
ITUの5月17「世界情報社会・電気通信日のつどい」の式典の会場では昨年のITUの150周年で交信した局世界のITU記念局との交信記念のQSLカードをはじめ50MHzでアフリカの局と交信したQSLカードなど世界各国から届いたQSLカードを展示ました。 また今年の8J1ITUの活躍の様子をビデオで展示し、合わせて式典会場でアマチュア無線のリモートによる公開運用を行いました。 コンデションの関係で、今年のリモートは北海道にあるJA8CCLのリモート局を使って運用しましたが、18MHzのバンドで連続して国内から呼ばれ、とても良い公開運用となりました。
総括
2016年の8J1ITU記念局の運用は電波伝搬のコンデションがさらに悪化する中で設備の保守改良、さまざまなモードでの運用、移動運用の地点をさらに広範囲にするなど数々の努力を重ねた結果、昨年度の実績を上回る1万局越えの交信を達成し、一ケ月の限定された期間で運用する記念局としては、国内最高の実績を上げ「世界情報社会・電気通信日」を国内外に広くPRできました事は、ひとえに日本ITU協会の皆様のお力添えと、日本ITU友の会アマチュア無線クラブの会員の努力の賜物と皆様に感謝したいと思います。
2016年6月22日 日本ITU友の会アマチュア無線クラブ 会長 木下 重博