「国際標準を活用したICT政策立案能力向上〜途上国の解決課題のためのよりよいICTインフラ整備〜」コース
Improving ICT Policy Planning Skills Utilizing Standards - the deployment of better ICT Infrastructure to overcome challenges –
平成26年1月23日から2月7日までの約2週間、(一財)日本ITU協会は、(独)国際協力機構(JICA)からの委託を受けて集団研修を実施した。研修内容は、参加国における国際標準を活用したICTインフラ整備等の社会問題解決に向けた最適なICT政策を検討できるような人材を育成することを目的としたものであり、国際標準を基点として、より効果的・効率的な通信インフラの整備について理論的、実践的な研修を実施した。
本研修は、平成24年度(前フェーズ)から総務省の協力を得て、当協会が実施しているもので、本年度からは、新たに3年間を1フェーズとして、昨年度の内容を一新して、実施することとなったものである。
研修員は、ブラジル(2)、カンボジア(1)、イラク(2)、ヨルダン(1)、ラオス(2)、ミャンマー(1)、マレーシア(2)、パキスタン(1)、トンガ(1)、ベトナム(1)の10カ国から14名が参加した。
研修は、日本政府の情報通信に係る政策を皮切りに、ITUの標準化動向、日本の標準化機関等の活動、Inception Report発表、課題分析手法、関連各企業団体等の標準化活動、Individual Report発表等の各講義や発表に加え、関連施設の見学で構成された。
日本の通信政策・標準化政策科目として、「日本の電気通信事業政策」(Telecommunications Policy in Japan)、「ICT分野の標準化について」(Standardization in the ICT Field)の講義を行った。ITUの標準化動向としては、「ITU-Tにおける標準化動向」(Standardization trends in ITU-T)の講義、日本の標準化機関等の活動としては、「TTCにおける標準化動向」(Towards global standardization in TTC)、「電気通信機器の基準認証制度」(Certification System for Telecommunications Equipment in Japan)、「電波システムの標準化」(Standardization of Radio Systems)の講義を行った。
日本の通信政策・標準化政策、ITUならびに日本の標準化機関の活動状況に関する講義が終了したところで、PCM (Project Cycle Management)という分析手法の講義を実施し、研修員の各国における標準化に関する課題の抽出を行うとともに、グループディスカッションにより、研修員間での知識レベルの共有を図った。さらに、このPCMの講義を、再度、研修の最後のIndividual Report発表の直前に実施し、グループディスカッションを通して、自国のICTの標準化に係る課題解決方法の策定や、自国の標準化活動の展開等について各自が整理できる機会を与えた。
関連各企業団体等の標準化活動としては、「KDDIのICTサービスおよび技術の開発戦略」(KDDI’s Strategy for Development of ICT Service & Technology)、「将来のネットワークの標準化動向」(Current Status on Standardization of Future Network)、「移動通信の標準化動向」(Standardization of Mobile Communication Systems)、「NICTにおける標準化に対する取り組み」(Research and Development on ICT and standardization activities in NICT)、「スマートシティー」(Smart City)、「放送インフラの構築について」(Setup of Digital Terrestrial Television Broadcasting Network)、「放送と通信の役割・連携について」(The Roles and Convergence of Broadcasting and Communications)、「ハイブリッド・キャストについて」(Hybrid cast -Integrated Broadcast Broadband System-)の各講義を行った。
施設見学としては、NTTドコモShow Room(Future Station)、NTTドコモNetwork Operation Center、NEC Innovation World、Panasonic東京センターの各施設を訪問し、各社・団体における新技術の開発、標準化活動等について視察を行い、各社の最新技術、標準化への取り組みなどについて理解を深めた。
NTTドコモ Show Room ”Future Station” では、近未来の移動通信のあり方について、また、同社Network Operation Centerでは、移動体通信の運用の様子を視察した。NEC Innovation Worldにおいて、NECの最新技術を見学するとともに、「ワイヤレス・ブロードバンド・アクセス」(Wireless Broadband Access)の講義を実施した。パナソニック東京センターでは近未来のICTの活用について視察するとともに、「パナソニックの国際標準化活動」(Panasonic Approach of Global Standardization)、「HD-PLC技術の国際標準化」(Panasonic Approach of Global Standardization on Broadband PLC Technology)、「高速無線通信規格LTEの国際標準化」(Standardization Activities for LTE, A Global Standard for High – Speed Mobile Communication)の各講義を行った。さらに、NICT (独立行政法人 情報通信研究機構:National
Institute of Information and Communications Technology)では、NICTの各種活動の様子を見学するとともに、「NICTにおける標準化に対する取り組み」(Research and Development on ICT and standardization activities in NICT)の講義を実施した。
研修の最終日には、各研修員によるIndividual Reportの発表を行った。Individual Reportは研修員各自の自国の標準化活動の状況と今後の展開等を本研修の成果とからめてPCM手法等を用いて整理したもので、各国のICTに係る標準化活動の展望について活発な議論が行われた。
本研修コースは、研修員からは、概ね良い評価を得ているが、(一財)日本ITU協会は、より満足の得られる研修としていくために、研修終了時に研修員より講義内容、テキストおよび施設見学に対する評価、意見ならびに要望等を聴取し、これらの評価結果を分析、検討し、コース実施上の問題点を明らかにし、次年度以降のプログラムに反映させる考えである。
以 上