2020年 8J1ITU 運用レポート

2020年の8J1ITUの交信数とその概要 

一般財団法人日本ITU協会が後援する日本ITU友の会アマチュア無線クラブは2020年5月1日から31日まで「世界情報社会・電気通信日」の特別記念局コールサイン8J1ITUを運用しました。

今年は新型コロナウイルスの感染が拡大し日本国内でも人の移動が制限される事を早い段階から予想し、例年の運用形態とおなじ活動ができないと考えました。 

8J1ITUの特別記念局は、霞ヶ浦の移動しないアマチュア局の免許と、移動するアマチュア局の免許の2つの免許を使って、霞ヶ浦とそれ以外の地域の2か所から8J1ITUの運用を行って来ました。 霞ヶ浦の移動しない局は5波同時運用が可能な充実した無線設備があり、例年ですと延べ人数で100~150名のクラブの会員が集まり、世界各国に向けてPR活動を行ってまいりました。 しかし無線室は狭く、宿泊施設も多くの参加者が宿泊するために、人との間隔を十分に取れません。 たいていの運用参加者は自家用車で参加しますが、一部の方は公共交通機関を利用します。 クラブ員に、たとえわずかの可能性であっても感染のリスクがある事を避けるべきと考え、霞ヶ浦の固定局は、局の運営管理者である木下1人で行う事としました。 オペレータは無線室に1人しか入れませんが、遠隔操作の設備も免許申請してありましたので、数人のオペレータに限って、霞ヶ浦の無線設備を遠隔地から運用する運用方法も併用しました。 例年5月の最終末には霞ヶ浦からCWの国際コンテストであるWPXコンテストに霞ヶ浦からマルチオペレータで参加する事で、最後の交信数の積み上げに貢献して来ました。 今年はCWが得意で良いアンテナを持っている会員の7N4SJX 井岡氏にシングルオペレータでさいたま市見沼区から参加してもらいました。

移動するアマチュア無線局については、それぞれのクラブ員の個人宅で個別に行う事とし、屋外での移動運用の場合は公共交通機関を使わないで移動し、周囲の人と十分に距離を取る事ができる場所で運用して頂く事としました。 移動する局の運用は原則週末を除いていましたが、今年のような状況下では十分な交信数はできないという予測で、霞ヶ浦の運用とは無関係に、週末を含む全ての日で運用を募集する事にしました。 移動する局としない局が互いに連携を取る余裕は無いので、全く自由にお互いが運用し、運用中に、同時に別の局が運用している可能性について電波でアナウンスして理解を得る事としました。

移動運用の管理は例年は私が行って来ましたが、今年は霞ヶ浦の運用に専念できるように、移動局のスケジュールから交信数の管理などの運用管理を7K1CPT 山田氏にお願いしました。

こうした条件下で2020年の8J1ITUの運用が開始されまました。

昨年の交信数はコンデションの悪い中で12,882局との交信数でしたので、今年の運用形態から考えてよほどの努力をしなければ1万局の目標は達成できないと考えていました。

今年の運用結果は当初の予想に反して15,478局と目標を50%も超えて、過去最高の交信局数となる成果となりました。 

今年のような悪条件下での運用は、今後は無いと思いますが、当初に予想した交信数に対して、各クラブ員が割り当てられたそれぞれの移動運用で1局でも多く交信するように、こつこつと努力して頂いたこと。 遠隔操作でも霞ヶ浦で2,500局を超える交信を達成した事、などの積み重ねで今回の成果が得られました。 私自身も霞ヶ浦の移動しない局でひと月の運用としては人生最大の6,000局を超える交信を行いました。

交信の相手局としては国内局が10,339局で66.8%海外局が5,139局で33.2%、という内訳で、今年の方が海外の局の割合が少し増加しています。 これは弱い信号でも遠距離の通信が可能になるFT8やFT4のモードの運用が大きく寄与しています。 この2のモードだけで昨年の4倍の5,000交信を超す交信を行っています。 50MHzではFT8でドイツと交信しました。

移動運用は小笠原や旭川といった特別な遠隔地での運用はありませんでしたが、クラブ員各局が、それぞれの運用地で地道に交信局数伸ばしてくれた事が今年に成果につながりました。

運用の準備

無線局の設備では、昨年の台風で50MHzの14エレメントの八木アンテナのロテータが破壊され、修理が必用な状況でした。 コロナウイルスの予防のために、クラブ員による修理は断念し、4月半ばに専門業者に依頼して霞ヶ浦のアンテナの大規模な修理及び整備を行い2020年の運用に備えました。

今年の運用

霞ヶ浦の運用

今年の交信全体を振り返ってみても、バンドコンデションが昨年と比べて良かったわけでは無く、開局の初日は4月30日の夜から霞ヶ浦に入り、開局初日の夜はヨーロッパの一般局とSSBで交信できるほどのコンデションでは無く、開局初日の夜の運用空振りに終わりました。 翌日は朝から7MHzで国内中心にSSBを運用し、夜のヨーロッパのオープンを待ちました。 5月1日の夜中のヨーロッパは全期間中で一番良くバンドが開け、5月2日の夜中3時頃までバンドがオープンしました。 コンデションのピーク時にはヨーロッパのモービル局やQRP局ともSSBで交信ができました。 今年のバンドのオープンの特徴は、昨年と同じ傾向で、普段はなかなか交信できないイギリスの局とたくさん交信ができた半面、多くの局がいるイタリアの交信がいつもより少なめでした。 時折米国の東海岸とも交信できる、といった普段通りでないコンデションでした。

 国内の交信でもコンデションが悪く、普通では、運用するすき間が無い7MHzでも結構すき間が多く、簡単に運用する周波数が確保できました。 これは全国的にバンドがオープンしていないコンデションの良くない兆候で、呼んでくる局も例年より少ななく、また時間の経過と共に、交信エリアが移り、さっきまで、普通に交信できていた周波数が次には、今まで聞こえていなかったエリアからの混信に見舞われ、周波数を移動せざるを得なくなるといった場面がありました。 せっかく運用周波数を確保して交信を始めても2週目以降は7MHzでもすぐに呼んでくる局が途切れ、CQの連呼になりました。 それでも国内が開ける昼の時間帯にはHFのハイバンドを中心にSSBで運用したが、能率が悪くCQの空振りが増え、運用モードをFT8やFT4のデジタルモードに中心を移しと夜のDX通信で局数を伸ばすという、とても忍耐のいる運用となりました。 今年の霞ヶ浦の交信数はオペレータの数は圧倒的に少なかったのですが、ほぼ昨年の実績と同等の交信を行いました。 この中で遠隔操作2,544交信が大きな支えとなりました。

霞ヶ浦での今年の交信数は昨年並みの8,650局に達しています。

移動運用

移動運用はできるだけ屋外の運用はさけて、クラブ員の自宅アンテナを利用した運用としました。

移動地は、さいたま市見沼区、浦和区、東京都品川区、板橋区、練馬区、松戸市、土浦市、川越市、太田市、鴻巣市、福島市、守谷市、名古屋市、常陸太田市、那珂市、つくば市、大宮市、朝霞市、美浦村などです。

今年の移動運用ではサテライトを使った宇宙通信が13交信ありました。

移動局による運用は合計で6,828局でした。移動局の昨年の4,178交信数にくらべ2,600局以上増加した事が、今年の記録更新に大きく寄与しています。

総括

2020年の8J1ITU記念局の運用は2019年よりは幾分回復した電波伝搬のコンデションの中での運用でした。 霞ヶ浦のオペレータは1人というかってない厳しい条件下での運用でしたが各地で活発に移動運用を行い、FT8、FT4など微弱な電波でも交信できるモードも使いクラブ員各位の協力のおかげで、今年も1万局の目標を達成し、かつ過去最高の交信局数を更新する快挙を成し遂げ、「世界情報社会・電気通信日」を国内外に広くPRする事ができました。

 この成果はひとえに日本ITU協会の皆様のお力添えと、日本ITU友の会アマチュア無線クラブの会員の努力の賜物と皆様に感謝したいと思います。                           

                                     2020年6月10日

                                日本ITU友の会アマチュア無線クラブ

                                    会長 木下重博