いよいよ、あらゆるモノが通信ネットワークでつながるIoT時代に突入です。 このIoTに必要なものが通信ネットワークとセンサーです。そして、これを動作させるために絶対必要なのが電気です。 ということで、今回はこの「電気」について考えます。同時に、電気の誕生に伴って発展してきた「電気通信」についても考えます。
今般、「スマートエネルギーWeek 2018」という名称で、電気エネルギー分野に係わる会社1580社が集まった一大展示会が東京ビッグサイトで開催されました。 電気について調査するにはまたとないチャンスでした。まず、国際二次電池展の模様についてご紹介します。
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≪会場となった東京ビッグサイト正門≫
§§§ 国際二次電池展の模様 §§§ |
平成30年3月、東京ビッグサイトで出展社1580余の「第14回スマートエネルギーWeek 2018」が開催されました。この展示会は8つのテーマゾーンに分かれており、その中の一つが国際二次電池展でした。
この国際二次電池展には292のブースがありました。会場を回って見ると、さすがにリチウムイオン電池に関する展示ブースが多かったですね。
では、今注目のリチウムイオン電池、そして今後一層注目されそうな電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、Dr.Ozawa電池、マグネシウム電池、全固体電池について、ご紹介します。
1 リチウムイオン電池(LIB:Lithium-Ion rechargeable Battery)
≪「エーツーバッテリー(株)のブース≫
現在、リチウムイオン電池が全盛です。
他の二次電池としては、鉛蓄電池、ニッカド(ニッケルカドニウム)電池、ニッケル水素蓄電池などが有名です。
特に鉛蓄電池は、自動車のセルモータやライトなどの電源として今も大活躍です。この基本原理はもう160年ほど前に発明されたもので、これほど長い間使われる技術というのは凄いものですね。
そして今まさに売り上げNo.1はリチウムイオン電池です。ちょっと前までは、充電できる電池としてニッカド電池が沢山使われていました。それが凄い勢いでリチウムイオン電池に置き換わっています。その勢いは小型電気機器などの小容量分野のみならず、大容量を必要とする自動車分野でも同様です。
ところで、どうして、リチウムなのでしょうか。その理由は、①リチウムは、イオン化傾向が高い(化学反応が非常に発生し易いため、高出力が出る)②リチウムは、非常に軽い物質である(Liの原子番号3番である)③比較的安価な材料で作れる、からです。
後述の電池販売統計からも明らかなように、二次電池の中でも、もっとも販売金額が多いのがリチウムイオン電池です。電気自動車(EV)やパソコン、スマホなどの電源として大量利用が進んでいます。
下表は電池を利用する装置のおおよその電池容量を調べてみましたが、リチウムイオン電池の存在感がダントツです。
機種 |
電池容量の目安(KWh) |
主な電池の種類 | 主な利用目的 | |
端 末 |
スマホ | 0.01~0.03 | リチウムイオン電池 | スマホ電源用 |
パソコン | 0.05~0.2 | リチウムイオン電池 | パソコン電源用 | |
バ イ ク ・ 車 |
アシスト自転車 | 0.2~0.4 |
リチウムイオン電池 ニッケル水素電池 ニッカド電池 |
モータ駆動用 (人力とモータの併用) |
エンジン式自動車 | 0.3~2 | 鉛蓄電池 | セルモータ駆動用 | |
電動バイク | 0.5~3 | リチウムイオン電池 | モータ駆動用 | |
ハイブリッド自動車 | 1~5 |
リチウムイオン電池 ニッケル水素電池 |
モータ駆動用 (エンジンとモータの併用) |
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電気自動車(EV) | 10~100 |
リチウムイオン電池 ニッケル水素電池 |
モータ駆動用 | |
蓄 電 |
家庭用蓄電システム | 1~15 |
リチウムイオン電池 ニッケル水素電池 |
家庭の非常電源用 |
産業用蓄電システム | 10~300 |
リチウムイオン電池 鉛蓄電池 アルカリ蓄電池 ニッケル水素電池 |
工場の非常電源用 |
特に、電気自動車や家庭用・産業用蓄電システムの普及が進むにつれ、リチウムイオン電池のニーズは爆発的に増大しそうです。
2 電気二重層キャパシタ(EDLC:Electric Double-Layer Capacitor)
≪日本ケミコン(株)のブース≫
物理電池の中で、今、大変注目されているのが、電気二重層キャパシタです。
昔から「コンデンサ」という一時的に電気を貯めておく電気部品がありました。ただ、このコンデンサの容量は、大変小さいものでした。ところが、電気二重層という現象を利用したキャパシタ(=コンデンサ)が開発され、桁違いに大容量化したのです。
代表的なコンデンサと容量を比較してみたのが下表です。
≪チップ通販サイトを調べた結果≫
種 類 | 容 量 ※ |
セラミックコンデンサ | 1PF~10μF |
電解コンデンサ | 0.1μF~100mF |
電気二重層キャパシタ | 0.01F~4000F |
※ なお、キャパシタ容量のF(ファラッド)と電池容量のAhやWhとの換算は、さまざまな条件を設定しないと単純に比較できません。
コンデンサ、電気二重層キャパシタ、鉛蓄電池、リチウムイオン電池を比較した図が日本ケミコン株式会社のHPに掲載されていました。電気二重層の構造など、詳しくは、当該ページ(下図をクリック)をご覧ください。
≪https://www.chemi-con.co.jp/tech_topics/top_edlc_01.html≫
電気二重層キャパシタの優れた特性は、①充電時間が短いこと、②継ぎ足し充電でも寿命が低下しないこと、③瞬発力があること、など非常に魅力的です。
既に、自動車が減速する時に発生する運動エネルギーを電気エネルギーに回生して、このキャパシタに蓄えて再利用するタイプの自動車が販売されています。
また、この電気二重層キャパシタをモータ駆動用に利用した電動自動車(C-COMS:東大)の試作車も作られています。
(下の写真をクリックすると東京大学堀教授のHPにジャンプします。)
≪https://www.energy.iis.u-tokyo.ac.jp/html_faculty/html_08/hori.html≫
日本ケミコン株式会社のブースで配布していた資料の中には、この東大の堀洋一教授の電気自動車の将来像の紹介がありました。
化学電池などを利用して自動車の中にあらかじめ電気を貯めておくことをせず、外部(例えばガードレール)からワイヤレスでキャパシタ経由で電気を供給しながら動く電気自動車が開発される、というものです。
このイメージする電気自動車の模型が下の写真です。
自動車に積まれている丸い筒状のものがキャパシタ、四角く道路に埋め込んであるものがワイヤレス給電装置です。
模型自動車がこのワイヤレス給電装置を通過するときにキャパシタに給電され、駆動モータが回転します。
≪日本ケミコン株のブース≫
今後、当該キャパシタの更なる進化とともに、幅広い用途が開けていくことでしょう。
3 リチウムイオンキャパシタ(LIC:Lithium Ion. Capacitor)
化学電池と物理電池の原理を併せ持つ蓄電デバイスです。2極のうち、負極側がリチウムイオン電池、正極側が電気二重層、という組み合わせ構造を持つ電池です。
最大の特徴は、電気二重層キャパシタとしての長所を持ちながら、エネルギー容量を大幅に向上させることができる、というものです。
既に日本メーカ数社が販売しています。下の写真は、JMエナジー株式会社製のリチウムイオンキャパシタです。
4 Dr.Ozawa電池(次世代リチウムイオン電池)
≪(株)電池屋のブース≫
詳しい原理は分かりませんでしたが、一般的なリチウムイオン電池に比べると、様々な特徴を有する次世代リチウムイオン電池とのことです。
一つの大きな特徴としては、一般的なリチウムイオン電池には必須のBMS(Battery Management System)が不要で、車の鉛蓄電池とそのまま置き換えが可能ということです。鉛蓄電池に比べ、軽量化や省スペースが実現できそうですね。
≪(株)電池屋のブース≫
なお、この電池を製造している会社は東通工株式会社です。当該社のCTOである小澤氏は、元SONYの方で、リチウムイオン電池の生みの親とされています。また、当該社のCEOである豊郷氏も元SONYの方だそうです。
5 マグネシウム電池
これは化学電池に分類される一次電池です。
一つのコンセプトは、非常災害時に利用できる電池、ということです。
未使用状態で自己放電が起きないことから、非常に長期間保存することができます。水を入れるだけで直ぐに発電させることができる新しい電池の姿ですね。
≪藤倉ゴム工業(株)のブース≫
また、1KWhの高出力タイプのモデルもありました。煌々と照らすスポットライトが頼もしく思えました。
≪藤倉ゴム工業(株)のブース≫
6 全固体電池
リチウムイオン電池(LIB)の電解質を液体から固体に変更したものを全固体電池と呼んでいます。残念ながら展示ブースを見つけられませんでしたが、安全性が大幅アップというのが一つの大きな特徴のようです。これから電気自動車などへの搭載が期待されています。
以上、国際二次電池展のレポートでした。
引き続き、電気全般について考えるとともに、電気通信との関係について考察してみました。
次ページへ >>> §§§ 「電気」と「電気通信」との関係 §§§ (2/2)
(参考)
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